高齢者における結核〜知識、予防、そして対応〜

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高齢者の健康に影響を与える重要な課題である結核について、伊勢保健所 健康増進課の講師2名をお迎えして「結核について学ぼう〜対応・早期発見〜」と題した勉強会を開催し、基本知識や対応策について共有していただきました。

このブログでは、結核の基本情報から、高齢者と施設における対応策までをさらに掘り下げて解説します。

結核の基本情報

結核は、結核菌による感染症であり、空気感染しますが感染だけでは他の人にうつすことはありません。

咳や痰、微熱、体重減少などの症状が見られます。

結核には感染と発病の違いがあることを認識しておく必要があります。

 

  • 感染:吸い込んだ結核菌が身体の中に入っている状態。悪い影響は与えず、他の人に感染させることはない
  • 発病:結核菌が身体の中で増殖し、咳や痰の中に結核菌が排菌され、排菌量が増えると他の人に感染させるおそれが出てくる

 

また感染力のある結核と感染力が無いタイプがあり、結核について学び理解すれば過度に怖がる必要はありません。

しかし、発見や治療が遅れると、「結核菌の量・強さ」「本人の免疫状態」「感染からの期間」によって病状が悪化し易く、適切な対応が必要とされます。

結核の現状

近年、結核の患者数は減少傾向にありますが、結核の新患者数のうち半数以上が70歳以上の高齢者であることが指摘されています。

結核菌が体内に入ってから感染が成立するまでは、約2ヶ月かかると言われています。
また、感染者のうち発病するのは1~2割であり、発病する人の約8割が感染後2年以内に発症すると報告されています。

令和3年の日本全国の結核の新患者数は11519人で、70歳以上の新登録結核患者は63.5%を占めています。


結核の罹患率(人口10万人対)は9.2で、結核の死亡人数は1844人と報告されています。

伊勢鳥羽志摩地区の新登録患者数は、伊勢市で15人、鳥羽市で5人、志摩市で10人となっており、それぞれの市で65歳以上の患者数も報告されています。

結核治療の重要性

結核治療は一定期間、規則正しく複数の薬を内服し続けることが求められます。

在宅(外来)で結核治療をされている方は、薬を内服している以外は普段どおりの生活です。


治療中の薬の服用を個人の判断で中止すると、薬が効かなくなる可能性があります。

直接服薬確認療法(DOTS)は、確実に結核を治癒させるために重要です。

施設での対応策

施設内で結核患者が確認された場合は、施設から保健所に患者発生の報告を速やかに行い、その後の対応方法について保健所と協議を行います。

また、結核患者が使用した衣服や食器・寝具に対する特別な消毒・処分は不要で、通常の掃除や食器洗いで十分とされています。

さらに、結核が疑われる人の介護では、室内の換気を十分に行い、咳・くしゃみの際にはN95マスクを着用することが推奨されています。(※結核菌はサージカルマスクの網目より小さいため、サージカルマスクでは、 結核の感染を十分に防ぐことができません。)

予防策と早期発見

BCGワクチン接種や、早期発見・早期治療が重要です。

感染を知るためにはQFT検査*が行われ、発病を知るためには胸部のX線(レントゲン)検査が行われます。

また、入所時や年1回の定期健康診断による結核の早期発見が推奨されています。

感染すると確率は低いですが、一生発病のリスクがあります。

*QFT検査・・・過去に結核菌に感染したことがあるか判定する血液検査

まとめ

  • 結核は空気感染、高齢者に多い
  • 結核感染の確認はQFT(血液)検査で、発病の確認はX線(レントゲン)検査
  • 感染だけでは他の人にうつさない
  • 感染が成立するまで2ヶ月かかる
  • 感染しても発病するのは1~2割
  • 感染すると一生発病のリスクあり

特別養護老人ホーム うがた苑

住所:三重県志摩市阿児町鵜方2824-85