いくつになっても元気ハツラツで健康な方を見かけることもありますが、一般的には加齢により筋力の低下は起こるものです。
特に40歳を境に筋肉量が低下しだし、60歳を超えると筋肉の減少率は加速します。
この加齢による筋力低下とともに運動不足、栄養不足、病気などによって通常以上に筋力が低下した状態を「サルコペニア」と言います。
サルコペニアが進行すると、転倒・骨折を引き起こし、歩行困難になり、症状が進むと寝たきりなどの要介護状態になる可能性があるため、近年ではサルコペニアの予防や対策が注目されています。
サルコペニアとは
加齢による筋力低下とともに運動不足、栄養不足、病気などによって通常以上に筋力が低下した状態のこと。ギリシャ語で「筋肉」を意味する「サルコ(Sarx/Sarco)」と「喪失」を意味する「ペニア(Penia)」を組み合わせた言葉です。
サルコペニアが進行すると、寝たきりにつながり、嚥下障害の悪化、人工呼吸器から離脱ができなくなる可能性があります。
重症化して要介護状態になると改善が難しいため、予防と早期治療が大切です。
サルコペニアが疑われる症状
- 転倒しやすくなった
- イスから立ち上がりにくくなった
- 歩くスピードが落ちた
- 横断歩道を青信号で渡りきれなくなった
- 手すりにつかまらないと階段が上がれない
- ペットボトルやビンの蓋が開けにくくなった
- ふくらはぎが細くなっている
など・・・
以上の症状に覚えがあれば、サルコペニアの可能性があります。
簡単!セルフチェック
サルコペニアの可能性があるかどうか、自分で簡単にチェックすることができる2つのセルフチェックをご紹介します。
※セルフチェックに当てはまっても、必ずしもサルコペニアとは限りません。
①指輪っかテスト
ふくらはぎの最も太い部分を両手の親指と人差し指で囲むテストです。
【指輪っかでふくらはぎを囲めない場合】
サルコペニアの可能性:低
両手の親指と人差し指でふくらはぎをつかめない場合、筋肉量は十分と判断できます。
【指輪っかでふくらはぎをちょうど囲める場合】
サルコペニアの可能性:中
将来的にサルコペニアになる確率が半々の方です。
筋肉量はやや減少しているものの、現段階ではまだサルコペニアとはいえません。
ただし予防策を打たなければ、将来的にサルコペニアになる可能性はあります。
【指輪っかの中にふくらはぎがすべて収まる場合】
サルコペニアの可能性:高
隙間ができる場合、全身の筋肉量の減少も考えられます。食事と運動を見直し、生活習慣を改善していきましょう。また、体重を減らそうとしていないのに、1年間で4.5~5kg以上体重が減った場合や、疲れやすいと感じる場合はかかりつけ医に相談しましょう。早期発見が大切です。
②片足立ち(開眼片脚立位テスト)
目を開けた状態で両手を腰にあて、片足を5cmほど浮かせて何秒姿勢をキープできるか計測するテストです。片足立ちのキープ時間が左右どちらかでも8秒未満の場合は、サルコペニアの可能性が高くなります。転倒事故などを防ぐため、テストは椅子や手すりなどのそばで行ってください。
では、サルコペニアはどのように予防・改善をするべきなのでしょうか。
食事療法と運動療法でサルコペニアを予防・改善!
食事療法
食事はバランス良く栄養を摂取することが基本になりますが、サルコペニア予防には特に筋肉に必要な「タンパク質」「ビタミンB」。骨に必要な「ビタミンD」を意識して摂取するようにしましょう。
タンパク質
サルコペニアを予防するには筋肉の材料となるタンパク質を食事から補う必要があります。
たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されていて、効率的に予防・改善するには特に必須アミノ酸「BCAA*」を含む食品を積極的に摂取することが推奨されています。
BCAAを多く含む食品
マグロ(赤身)、カツオ、アジ、サンマ、たらこ、鶏胸肉、卵、牛乳、チーズ、大豆類、BCAAを含むサプリメント。
*BCAA(分岐鎖アミノ酸)・・・体内で作ることができない必須アミノ酸(9種類)の中の、分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸*と呼ばれるバリン、ロイシン、イソロイシン、3種類の総称。筋肉のエネルギー代謝や合成に重要な役割を果たします。特にロイシンはタンパク質の分解を抑制し、合成を促進させることで筋肉量を増加させます。
ビタミンB6
ビタミンBの中でも特にビタミンB6は筋肉の合成を促進するのに必要なビタミンです。
ビタミンB6を多く含む食品
牛・豚・鶏のレバー、マグロの赤身、カツオ、鳥ササミ、ピーナッツ、キウイ、バナナ。
ビタミンD
カルシウムとリンの吸収を手伝って骨を強くし、筋肉にも作用するビタミン。食品から摂取する方法と、1日に10分〜20分ほど日光を浴びて体内で合成する方法があります。
ビタミンDを多く含む食品
魚介類(紅シャケ、白シャケ、マグロ、サバ、ブリ、イワシ、にしん、いくら、しらす干し、アンコウ、あん肝、うなぎ)
卵類(卵、うずら卵)
乳製品(牛乳、ヨーグルト、パルメザンチーズ、モッツァレラチーズ、カマンベールチーズ)
きのこ類(生しいたけ、干ししいたけ、エリンギ、まいたけ、ぶなしめじ、えのきたけ、きくらげ)
運動療法
上半身に比べ下半身の筋肉が落ちやすいため、今回は下半身の筋力トレーニングをご紹介します。どれも自宅で簡単にできる体操なので、適度な運動で筋肉の減少を予防しましょう!もっと負荷の高い運動をしたい方はいろんなトレーニングに取り組んでみてくださいね!
【高齢者運動#4】立っておこなう体操スクワット・足開き・背伸び
【高齢者運動#5】正しい立ち上がりで筋力を鍛える運動
【高齢者運動 #14】立っておこなう体操スクワット(ノーマル&キープ)・背伸び(ノーマル&キープ)
運動は最初から目標を高くしすぎると、習慣化しにくくなります。
まずは無理をせず、自分のペースで始めることが大切です。
はじめのうちは「運動は10分」「週に3回」といったゆるい目標設定でもOK!
大事なのは、自分にとって無理なく続けられる目標であるかどうかです。
はじめに設定した目標に慣れてからでも、目標設定を上げるのは遅くありません。
まとめ
- サルコペニアは加齢による筋力低下とともに運動不足、栄養不足、病気などによって通常以上に筋力が低下した状態のこと
- サルコペニアが進行すると、要介護状態になる可能性がある
- サルコペニアを予防するには、バランスの良い食事と、適度な運動が大切
サルコペニアは要介護の前兆。サルコペニアを予防するためには、栄養バランスの取れた食事と適度な運動を心がけて日常生活を送ることが大切です。食事や運動で進行を抑え、改善することができるので、生活習慣を見直してみましょう。
不安のある方はかかりつけ医に相談のうえ、サルコペニア診断を受けるのも良いでしょう。
これらの情報が、少しでもみなさまのお役に立てれば嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!